引きこもり地域支援センターとは、厚生労働省のひきこもり支援推進事業に基づきすべての都道府県・政令指定都市に設置された公的な相談窓口で、社会福祉士・精神保健福祉士などの支援コーディネーターが、ご本人とご家族からの相談に無料で対応する機関です。
「引きこもり状態が続いていて、どこに相談すればよいか分からない」「家族として何ができるのか知りたい」というとき、最初にアクセスできる公的な窓口がこの引きこもり地域支援センターです。本ページでは、センターの役割、利用できる方の範囲、受けられる支援内容、利用の流れを、現場の事例を交えながら解説します。
引きこもり支援センターの2つの役割
引きこもり地域支援センターには「相談の入口としての役割」と「地域の支援機関をつなぐハブとしての役割」という2つの大きな機能があります。単に話を聞くだけの場所ではなく、ご相談者の状況に応じて適切な専門機関へ橋渡しをする、地域における引きこもり支援の中核拠点として位置づけられています。
相談の入口としての役割
引きこもりに関する相談は、医療・福祉・就労・教育など複数の領域にまたがります。「最初にどこへ電話してよいか分からない」というのが、ご家族から最も多く寄せられる声です。引きこもり地域支援センターは、こうした「最初の一歩」を受け止める入口として設置されています。電話で「家族が10年以上家から出ていない」「30代の息子が仕事を辞めてから誰とも話さなくなった」など、漠然とした不安をそのまま伝えることができます。相談員は急かさず、状況を整理しながら、次のステップを一緒に考えてくれます。
地域の支援機関をつなぐハブとしての役割
引きこもり地域支援センター単独で、すべての課題を解決できるわけではありません。状況に応じて、医療機関、福祉事務所、保健所、地域包括支援センター、地域若者サポートステーション、ハローワーク、就労移行支援事業所、当事者会・家族会など、適切な専門機関へ橋渡しを行います。センターの相談員は地域の支援ネットワークを把握しており、どこに何を相談すればよいかを整理してくれます。これは、当事者やご家族が一人で全国の窓口を調べて回る負担を、大きく軽減してくれる機能です。
誰が利用できるのか?対象者の範囲
引きこもり地域支援センターは、引きこもり状態にある当事者ご本人だけでなく、ご家族・きょうだい・周囲の支援者など、引きこもりに関わるすべての方からの相談を受け付けています。「本人を連れて行かないと相談できない」と思われがちですが、実際にはご家族だけ、あるいは支援者だけでの相談が、利用の入り口として最も多いケースです。
具体的には、次のような立場の方が相談できます。
- 引きこもり状態にある当事者ご本人
- 引きこもり状態にある方のご家族(親、配偶者、きょうだいなど)
- 引きこもり状態にある方を心配している友人・知人
- 地域で見守りや支援に関わる民生委員・自治会関係者
- 学校や職場で引きこもり傾向のある方に接している教職員・上司・同僚
年齢制限は基本的にありません。10代の不登校から、20〜30代の若者、40〜50代の中高年、80代の親と50代の子の8050問題まで、幅広い年代に対応しています。一部のセンターでは「子ども・若者総合相談センター」と一体運営されている場合があり、その場合も年齢制限は設けていない自治体がほとんどです。
地域要件としては、原則として該当する都道府県・市区町村に在住・在勤・在学している方が対象です。ただし、「家族は別の都道府県に住んでいる」というケースも珍しくないため、まずはお住まいの自治体のセンターに電話で確認するのが確実です。
どんな支援が受けられるのか
引きこもり地域支援センターでは、電話相談・来所相談・訪問支援(アウトリーチ)・居場所の提供・専門機関への接続といった、幅広い支援を組み合わせて提供しています。センターによってメニューには違いがありますが、基本となる相談支援は全国共通で提供されています。
電話相談
最も気軽に利用できる入口です。受付時間内に電話をかければ、相談員と直接話すことができます。匿名でも相談可能で、初回はおおむね30分から1時間ほどかけて、状況を整理してくれます。「うまく説明できないかもしれない」と心配される方もいますが、相談員は引きこもり支援の経験豊富な専門職です。話の進め方は相談員が導いてくれるので、まとまっていない状態のまま電話して大丈夫です。
来所相談
センターの相談室で、対面で相談する方法です。電話相談から来所相談へ進むケースが多く、初回は予約制が一般的です。来所相談では、より時間をかけて状況を整理し、今後の支援方針を一緒に考えていきます。ご家族だけでの来所も可能で、複数のご家族が一緒に来所されるケース(たとえば、ご両親と相談員、本人不在で開催)も少なくありません。
訪問支援(アウトリーチ)
本人が外出困難な場合や、来所相談の前段階として、相談員がご自宅を訪問する形での支援です。訪問支援は本人の同意を前提とすることが多いですが、ご家族からの相談を受けて、まずはご家族と訪問先で面談するというケースもあります。訪問頻度や進め方は、ケースごとに調整されます。
居場所の提供
同じ悩みを抱える当事者同士が交流できる「居場所」を運営しているセンターも多くあります。気軽に立ち寄れる空間で、無理に話す必要はなく、お茶を飲んだり本を読んだりして時間を過ごす、というスタイルです。「外出する目的地ができる」「自分以外にも同じ状況の人がいると分かる」という意味で、社会との接点を取り戻す第一歩として活用されています。
専門機関への接続
状況に応じて、医療機関、地域若者サポートステーション、就労移行支援事業所、自立相談支援機関、家族会など、適切な専門機関を紹介してくれます。センターから直接予約を取り次いでくれるケースもあり、「次にどこへ行けばよいか」を相談員と一緒に整理できる点が大きな安心材料になります。
どんな専門職が対応してくれるのか
引きこもり地域支援センターでは、社会福祉士・精神保健福祉士・保健師・公認心理師・臨床心理士などの国家資格や専門資格を持つ「ひきこもり支援コーディネーター」が、相談支援の中心を担っています。引きこもり支援に必要な福祉・心理・保健の知識を併せ持つ専門職が対応するため、医療・福祉・就労にまたがる相談にも、一貫した視点で対応してもらえます。
主な対応専門職と、それぞれの専門領域は次のとおりです。
- 社会福祉士:福祉サービス全般の専門家。生活困窮、生活保護、各種福祉制度の利用に関する相談に対応します。
- 精神保健福祉士:精神保健分野の福祉専門職。うつ症状や精神的な不調を伴うケースで、医療機関と福祉サービスの橋渡しを行います。
- 保健師:地域保健の専門家。心身の健康相談や、保健所・保健センターのサービス紹介を担当します。
- 公認心理師・臨床心理士:心理的アセスメントとカウンセリングの専門家。継続的な心理面接を提供するセンターもあります。
これらの専門職は、いずれも厚生労働省の「ひきこもり支援推進事業実施要領」に基づき、利用者のプライバシー保持と守秘義務が課されています。相談内容が第三者に漏れることはありません。
都道府県設置センターと市町村センターの違い
引きこもり支援には大きく分けて2つのレベルがあり、47都道府県と20政令指定都市に設置された「ひきこもり地域支援センター」と、令和7年度時点で全国の市町村に設置されている「ひきこもり支援ステーション」「ひきこもりサポート事業」とで、役割が分かれています。どちらも公的な相談窓口ですが、対応範囲と専門性に違いがあります。
都道府県・政令指定都市設置の「ひきこもり地域支援センター」
平成21年度から設置が開始され、平成30年度までに全47都道府県と20政令指定都市の合計67自治体に設置完了している、引きこもり支援の中核拠点です。社会福祉士・精神保健福祉士などの専門資格を持つ支援コーディネーターを必置とし、広域での相談対応、サテライト相談、出張相談、支援者向け研修などを実施します。市町村レベルではカバーできない専門的な支援や、市町村と連携した広域支援を担う、ハブ機能が中心です。
市町村設置の「ひきこもり支援ステーション」「ひきこもりサポート事業」
令和4年度から、より住民に身近なところで相談支援を受けられる体制づくりとして、市町村レベルでの支援機能の整備が進められています。「ひきこもり支援ステーション事業」は相談支援・居場所づくり・ネットワークづくりを必須とする事業で、令和7年度時点で全国129自治体が実施しています。「ひきこもりサポート事業」は8つのメニューから選択して実施する導入型の事業で、同じく令和7年度時点で164自治体が実施しています。
どちらに相談すべきか迷う場合は、まずお住まいの都道府県のひきこもり地域支援センターに電話する方法がおすすめです。市町村レベルの窓口についても、都道府県センターから情報提供してもらえます。
全国67自治体のひきこもり地域支援センターの連絡先は、全国の引きこもり地域支援センター一覧でご確認いただけます。
利用の全体的な流れ
引きこもり地域支援センターの利用は、電話での問い合わせから始まり、初回相談(電話または来所)を経て、状況に応じた継続支援や他機関連携へと進む3段階の流れが基本です。すべて無料で、途中で利用をやめることも、しばらく休んで再開することも自由にできます。
ステップ1|電話で問い合わせる
まずはお住まいの地域のセンターに電話します。受付時間は平日9時から17時前後が中心ですが、センターによって異なります。電話では「初めてご相談したいのですが」と切り出せば大丈夫です。受付者がご本人の年齢や状況を簡単に確認し、来所相談の予約日を設定するか、電話相談の日時を別途設定するかを決めていきます。電話だけで完結することもあります。
ステップ2|初回相談(電話または来所)
支援コーディネーターと、おおむね1時間ほどかけて状況を整理します。話せる範囲で、ご本人の年齢、引きこもり状態が始まった時期、これまでに利用した支援、現在お困りのことなどを共有します。事前に何か準備する必要はありません。何もまとまっていない状態で相談しても、相談員が話を引き出してくれます。初回で結論が出る必要はなく、「話して整理する」こと自体が目的です。
ステップ3|継続支援・他機関連携
初回相談を踏まえ、継続的にセンターでの相談を続けるか、他の専門機関へつなぐかを決めていきます。継続相談では、月に1〜2回のペースで面談を重ね、本人の意欲や状況に合わせて少しずつ次のステップへ進んでいきます。他機関連携の例としては、医療機関への受診、地域若者サポートステーションでの就労準備支援、就労移行支援事業所への通所、家族会への参加などがあります。すべて本人とご家族の意思を尊重しながら進められます。
具体的な予約手順については、別ページの引きこもり支援センターの予約方法ガイドで詳しく解説しています。初めての相談で何を話せばよいか不安な方は、引きこもり支援センターへの初めての相談ガイドもあわせてご覧ください。
はじめての方によくあるご質問(FAQ)
はじめて引きこもり地域支援センターを利用される方から、よくお寄せいただくご質問にお答えします。「相談していいのか分からない」「うまく説明できなさそうで不安」と感じる方も、まずは以下のFAQをご覧いただければ、利用のハードルが少し下がるはずです。
- Q1. 相談料はかかりますか?
- 相談料は無料です。電話相談、来所相談、訪問支援、いずれも費用はかかりません。引きこもり地域支援センターは厚生労働省のひきこもり支援推進事業に基づく公的事業として運営されているため、利用者負担は発生しません。来所する際の交通費や、紹介された医療機関での診療費などはご自身の負担となります。
- Q2. 本人を連れていけません。家族だけで相談してもよいですか?
- ご家族だけでの相談は、むしろ多くのケースで利用のスタートになります。本人がまだ外出できない、相談に同意していない、どう声をかければよいか分からない、という状況こそ、ご家族から相談していただきたい段階です。何度かご家族との面談を重ねた後、ご本人と一緒に相談につながっていくケースも多くあります。
- Q3. 年齢制限はありますか?
- 基本的に年齢制限はありません。10代の不登校から、20〜30代の若者、40〜50代の中高年、80代の親と50代の子の8050問題まで、幅広い年代に対応しています。一部のセンターでは、若年層向けの「子ども・若者総合相談センター」と一体的に運営されていますが、その場合も年齢で対応を断られることはほとんどありません。
- Q4. 予約は必要ですか?電話してすぐ話せますか?
- 電話相談は予約なしで対応してもらえることが多いですが、相談員が他の相談中の場合は折り返しになる可能性があります。来所相談は事前予約が必要なセンターがほとんどです。予約から初回来所までは、おおむね2週間から1ヶ月程度の余裕を見てください。緊急性が高い場合は、その旨をお伝えいただければ早期対応を検討してもらえます。
- Q5. 一度の相談だけで終わってしまうのでしょうか?
- 継続的な相談支援を提供するのが、引きこもり地域支援センターの基本姿勢です。1回で結論が出ることはむしろ少なく、月に1〜2回のペースで面談を重ね、状況の変化に合わせて支援内容を調整していきます。途中で利用を休む、しばらく経ってから再開する、ということも自由にできます。
- Q6. 相談内容が他に漏れることはありませんか?
- 相談員には守秘義務が課されており、相談内容が利用者の同意なく第三者に伝わることはありません。厚生労働省の「ひきこもり支援推進事業実施要領」では、職員のプライバシー保持義務、個人情報を関係機関に提供する場合の事前説明と同意取得が明記されています。匿名での相談も可能です。
本ページで紹介した情報は、厚生労働省「ひきこもりVOICE STATION」の公開情報をもとに、当サイト編集部が整理しています。各センターの具体的な対応内容や受付時間は地域によって異なる場合がありますので、お住まいの地域のセンターへ直接お問い合わせの上ご確認ください。
